TOYプロジェクトとは?



Tadoku(多読) Ondoku(音読) Yomikikase(読み聞かせ)の頭文字を取って名付けたツーク日本語学校のプロジェクトです。



多読
音読
読み聞かせ







多読



多読は英語でExtensive Readingと呼ばれ、初心者でも読むことを楽しめる方法として、外国語学習では長い歴史があります。
英語の場合は教材も多く、Graded Readersと呼ばれる教材をみなさんも一度はどこかで手に取られたことがあるのではないでしょうか。
多読では、わからない単語があってもそれを一つずつ辞書で調べたり、全てを理解できるまで先に進まないということはしません。
お話を楽しみ、知らない単語は意味を想像しながら読み進めます。
知らない単語も本の中で何度も出会ううちに、その使い方や意味がつかめてきます。
そんな風に自然と意味がつかめるようになるには、ある程度の量を読むことが必要になります。
それが多読です。
ことばの世界を広げるためには、そのことばが使われているさまざまな例を知り、生きたことばにできるだけたくさん触れることが欠かせません。
自分が読みたいと思った本を、好きなだけたくさん読む、そしてそれを楽しむことが多読では大切です。
多読は、決して無意味な反復練習ではありません。



日本語は文字学習と読みの力の獲得の間に大きなギャップがあります。
そのギャップの大きさと認知的・精神的負担から、読むことに興味を失ったり、読むことを嫌がる子どもたちが出てきます。
ですから、読みの活動への導入段階では子どもたちが心から読みたいというものを手に取り、読んでみることが非常に大切です。
保護者や教員が読み物を与え、読ませるだけでは、子どもたちの読書の扉を開くことは難しいのです。
ツーク日本語学校では、ひらがなの学習が終わると一年生から多読を始めます。
上記のギャップの一因は漢字ですが、学校の多読文庫には総ルビの本が揃っており、漢字があるから本が読めないということにならないように配慮しています。
また多読文庫の本は難易度別に色分けされていますが、子どもたちは難しめの本でも読みたければどんどん手に取っています。



ツーク日本語学校の多読ルール



  1. 一人で楽に読めるレベルから始める。
  2. 辞書を引かないで読む。(大人に意味を尋ねないで読む。ドイツ語等に訳さない。)
  3. 全部完璧にわからなくても、70%から90%理解できれば十分。
  4. 難しくて進まなくなったら、その本はやめて別の本に移る。






音読



音読は、考えることをせず、ただ何回も同じ文章を読ませられる退屈な訓練だと勘違いされることもありますが、実際はそうではありません。
自分で発した音を自分の耳と大人の耳で聞き、書かれた文字と発音やイントネーションを結びつけて自分のものとし、読む速さを身につけるために行う大切な練習です。
サッカーに例えると走り込みやパスワークなどの基礎トレーニングに似ています。
試合で90分間走り続けられる体力や基本的な技術がなければ、どれだけ才能のある選手でもそれを発揮することができないのと同じです。
継承語学習者は、小学校中学年あたりまでは現地語の発音の癖が強いことがあります。
これも自分が話すことば以外の文章を目で見て、音に置き換え(発音)、それを自分の耳と母語話者の耳で聞き、ときに母語話者の発音と比べることで、日本語を発音するための筋肉も鍛えられ、より日本語らしい音で読め、話せるようになっていきます。
また、読む量が少なくて文字を拾い読みしている段階から先へ進めないと、読み取る力も伸びていきません。
指読み・拾い読み・まとまり読み・交代読み・一行読みなどいろいろな段階を踏んで、徐々に読む力を身につけられるよう活動に工夫をしています。
音読は毎週必ず宿題に入っていますし、ご家庭で保護者の方に音読を聞いていただくようお願いしています。
一年間音読にきちんと取り組んだ子どもたちの日本語の上達ぶりに、大人はいつも驚かされます。
多読や音読で培った基礎的な力があって初めて、読んだ文章を理解し、味わい、自分のものとすることができるのです。







読み聞かせ



読み聞かせは、授業時間の前後にボランティアの保護者の方のご協力で行っています。
幼児への読み聞かせの効果は広く知られていますが、自分でスラスラ読めるようになった子どもでも、誰かにお話を読んで聞かせてもらうのは楽しい経験です。
何より、読み手の巧みさでお話の中に引き込まれる楽しさが味わえます。
展開を想像したり、登場人物に感情移入したり、自分なら手に取らなかったジャンルの本に興味を持つきっかけになったり、読み聞かせには子どもの心に響く何かがあります。
お話を楽しむということは、子どもの心にとってなによりの栄養です。